「デトロイトメタルシティ」「ヨイコノミライ」でトーク vol.3

http://d.hatena.ne.jp/culcom/20061126#1164557402
http://d.hatena.ne.jp/culcom/20061221#1166714012
前回前々回(↑)のつづきです。

トーク参加者の紹介(また間が空いてしまったので)

Masaoキールterasuyinumash
Ryota似非原republic下向き
イズミ:学生。教員志望。音楽、特にメタルへの造詣が深い。


本編

Inumash:今どうなんですか?例えば昔〜小学校でも中学校でも、誰かと誰かが付き合ってるみたいなのって伏せられていたじゃないですか。

園:え、そうだったんですか?

Inumash:僕、今26なんですけど〜僕等の頃は伏せられていた。

Masao&republic1963:伏せられていたね。

Inumash:それを暴かれると逆に凄い馬鹿にされるというか〜。

terasuy:え、それを肯定されないっていう事ですか?その関係を。

Inumash:肯定される否定されるの前にネタ化される。でネタ化されるのがいやだから伏せる。だから〜修学旅行の時とかに、「お前、誰々が好きなの?」とかいう話が価値が出る。

terasuy:ネタ化されるってのは確かにわかりますよ。だからと言って隠してるっていうのは・・。

キール:隠してないっていうか、私が中学の時は教室とかその辺でディープキスやってる連中いたしねぇ・・。

terasuy:じゃあ、じゃあ学校内で付き合っていたら学校内で合うって事は絶対無い。っていう規律みたいなのはあったんですか?

Inumash:たぶん同じクラスで話してるくらいはあるけど、ちょっと話す、普通に話している感じを装う、ばれてるんですけど〜。

terasuy:あ〜表面上はばれないように装うと。

Inumash:そうそうそう。帰り待ち合わせの場所とか時間をずらしたり。

キール:それは無いって言うか、見た事無い。

Masao:うちらの年代だと、大学のサークルでも似たような感じに続いてる。

terasuy:暗黙の了解的な?

Inumash:だから周りも察するんですよね。

terasuy:ネタにしないでくれって言う、予防線みたいな感じですかね?

下向きさん:その辺のやり方が下手なカップルっていうのは、皆から集中攻撃されるというか、叩かれる。

キール:それはなかったね。

似非原:俺もないね。

terasuy:その辺の感覚は、俺もちょっとわからない。

Inumash:方法がないんですよ。

Republic1963:要は、だから男女間の二者間係において、同じサークル内、コミュニティー内をごちゃごちゃさせんなよみたいな圧力みたいなのが、結構・・。

Inumash:要するにコミュニティーの力学みたいなのってあるわけじゃないですか、例えば恋愛って物凄い強いパーソナルな力学が働くわけですよね。それが働く事によってコミュニティーの力学自体にゆがみを生じさせる可能性があるからぁ、ソレは有るんだけどコミュニティーの中にいる時は伏せようねっていう暗黙の了解が実はあるんですよ。

Republic1963:それをぶち壊しにするのがサークルクラッシャー

キール:ネットゲームは確かにそうでした。ネットゲームのギルドはそうです。

inumash:あ〜近いかもね。バーチャルの方がそういう傾向が強いかも

キール:バーチャルの方だと誰と誰が付き合っているって大体皆わかってたけど、あえて言わなかったりとか、逆にそれを利用して三又、四又する奴がいたりとか。ヨイコノミライに出てきた大門でしたっけ?そのネットラジオやっている子。その子はどっちかっていうと、あのネットゲームの姫。リアルではあんま見ないけど、ネットゲームでは大概どっかしらのギルドに一人はいるっていうか。そんな感じですよね。

似非原:ただね〜あのね、微妙だったりするのは、恋愛って隠す物だって思ったりするわけですよね、大体の人は。

Inumash:でも、それってなんていうか日本的価値観としてあるわけじゃないですか。街で息するなっていうのも、そういう感覚なんですよね?ルサンチマンかというと、なんかちょっとルサンチマンではない。

似非原:いや、だから、それは〜要するに本当にお互い好きだからみたいな所があるわけじゃないですか?どこまで言ったら良いんですかねぇ?自分の古傷をアレするので〜

terasuy:だ、大丈夫ですか?

似非原:僕が付き合ってたメンヘルの女子で、あのその女子とかはコミュニティーで、俺がその子に告白されたんだけど、あのねだからね俺が〜何をこの時直感しかたというと、「あ、こいつは俺と付き合う事をネタにして、皆に受け入れられたいんだな」っと思ったんですよ。

皆:えぇぇぇ。

似非原:それは実際にある。あると思う。僕は思う。

terasuy:それ本当ですか?

似非原:思うし〜実際そうだと感じたんで。

キール:あ〜ネットゲームは結構そういうのある。

似非原:それ、リアルには言えないっていう、微妙な感性が働くわけですよ、いわゆる経験則みないなのがね、あの、なんでもネタ化にしちゃう子っていうの、それで受け入れられたいっていう女の子が居て、その典型だったんですよ。だから〜そういうパターンだろうなっと俺は思ったし、実際サークルの中で記者会見みたいなのをやったんですよ。

masao:リアルヨイコか!

republic1963:矢田亜希子押尾学みたいな?

似非原:そうそうそう、「私達付き合います!」みたいなね。そういう事をやったわけですよ。
一番やばいのは、そういう子だったりするっていう所が〜わりかし恋愛漫画とかで・・・

masao:あ〜確かに本田透が護身してるのは、そういう女しか寄ってこないから〜護身するんだって言ってますもんね。

Inumash:恋愛を伏せるっていうのは、二種類の視点があって〜こっち側からコミュニティーを壊したくないってのが、一個あるんだけど、もう一個は二者間係を他に可視化させることによって、逆にその二者間係が評価されわけじゃないですか。つまり〜僕とA子ちゃんだったら〜僕とA子ちゃんの世界なのに、何故かそれが他の人たちがその間係を見る事によって、例えば、その「なんであんな子と付き合ってるの?」とか「なんでそんな事やってるの?」とか、そういう余計なノイズが入ってくるわけです。だから、それを呼び込みたくないっていうのも確かに有るような気もします。で、例えばコレがある程度いい年代に達してきて、その酸いも甘いも分かってくると〜別にそこにノイズが発生してもかわしたりとか、無視したりとかっていうスキルが発達するので〜、例えば大学卒業したり社会人になったりして、誰かと付き合っているって事を誰かに言う、友達とかに言うのは問題が無いのだけれど、中学高校大学くらいだと、その辺のスキルが身についてないし、不安だから〜呼び込みたくないなのがあるわけで。例えば僕も経験が有るのだけれど、僕が誰かと付き合ってて、本当にその子の事が好きで、たぶんその事が友達にばれていて「お前なんで、あんな子と付き合ってるの?」と言われた瞬間に、その二人の世界が崩れるって言う経験があるんで・・・。

似非原:だから恋愛関係はセカイ系かしやすいんだ。

terasuy:そうなると、平松さんの話に繋がるんですが、この子はどういう感じなんですかねぇ?要は逆じゃないですか? むしろ関係を崩そう、としてるわけじゃないですけど、崩す方向に走っているわけじゃないですか。ある意味でサークルクラッシャーというか。

似非原:平松さんが根岸だったら良かったんだよね。
才能の無い奴ほど自意識こじらせると後々怖い。才能が有ると、それで承認欲がある程度満たされるから、それはそれでOKだったりする訳なんだよね。

Inumash:二者間係だけで満足する場合もあるけど、それを周囲に認めさせることによって、初めて成立する欲求もあるんですよ。僕とかは他のノイズはいらないので、二者関係だけで完結すれば良いでしょって感覚なんですけど、たぶんこの平松さんの場合はそうじゃないんでしょうね。

terasuy:自己顕示欲というか・・。

Inumash:逆にそれがアイデンティティだから、それを認めさせることによってイコール自分を認めさせることになる。そういうある種の短絡が生まれてるんじゃないかな。で、はっきり言って部長君が、物凄いカッコ良くて才能があって誰しも認められてる人間だったら、その構図ってわかるんですけど、そうじゃないから痛々しいしリアルなんですよ。例えば、僕が個人的な好みですけど、加藤ロサと付き合っていたら、そりゃあ言いますよ、皆スゲーって思うわけじゃないですか、でも、それが普通の街の子だったら、そうは言わない。

terasuy:必要性がないですよねぇ。でも平松さんの場合、必要性があった、それこそがアイデンティティを保つ為の道具だった。

キール:お姉ちゃんに突付かれていたからねぇ、「あんた恋人いるの?いないの?」って

inumash:それが物凄い低い階層でやってるから、それが凄く痛々しく感じるんですよ。それが物凄くカッコイイ子だったら、そんなに痛々しくはないんですよ「あ〜なんとなくその気持ちわかるな」って「でもちょっとやりすぎじゃね?」ぐらいの・・。それがそうじゃないから、なんでそんなレベルで自分を強調しようとするのかわからないので、痛く見えちゃう。

キール:それはやっぱ、閉鎖的なコミュニティーというか、漫研の内部で完結しちゃってるから・・。

Inumash:そそ、典型例。

Masao:漫画に出てくる人、皆そうですけどね。あの薀蓄係の天原とかもそうだしー。

Inumash:たぶん、ヨイコノミライに出てくる人って、誰も外部の視点というか評価の耐性が無いんですよ。

Republic1963さん:それはブログやれって事?

似非原:ブログで炎上しろと(笑

terasuy:青木さんを投入する事によって、どう耐性が出てくるかって言う、リアクション、実験みたいなもんですよね。

Inumash:そういう物語ですよね。

似非原:要するに〜オタクが嫌いでこのコミュニティーを潰した行って言う欲求を表しているのは青木さんだって、俺は思ったんですよ。なんでこいつら幸せそうなんだとみたいなね。自分はそのコミュニティーに本当は入りたいんだけど、入れなくて。

inumash:それ多分、生半可外部の視点を意識しすぎているからじゃないですかねぇ。恋愛の間係と一緒じゃないですか。二者関係で満足してれば良いんです、本来、本当は。僕と君で〜お互い肯定しあって、それで完結すれば良いんですけど、そこに例えば余計な第三者の評価を加える事によって、その関係が壊れるっていう力学が働いて、で、それに対して、その二者間係がある程度自分達の中で客観視できていれば、そんなの弾き飛ばせるのだけど、二者間係だけ、本当に相手の事しか見えてないと、いきなり外から攻撃された時に耐性が無い。だからその時にどうリアクションするかが、この物語、恋愛に例えると。

似非原:だから「中途半端な外部意識を持っている」って言いましたよね、だから青木の両親が編集者で漫画家ってでたとき、俺はやっぱり納得できない。それはなっとくできない。だってそれは内部の話だから。それは徹底して内部だから意味が無いんですよ。だから両親が漫画とかゲームとか大嫌いで見せられない、で、本当は入りたくて好きなんだけど、自意識が邪魔をして〜入れないっていうのなら分かるんですよ。

下向き:権力者が弱い奴を潰しているっていう構造って事ですよね。

Masao:いや青木さんの場合は、一回内部から外部に打って出た人なわけですよね。打って出たんだけど、ボコボコにやられちゃって、で内部にいる人が内部だけで幸せにやってるのが妬ましい。

terasuy:逆ルサンチマンみたいなもんですかね?

Republic1963:バックラッシュ

Inumash:バックラッシュというか、ブローバックというか。

Masao:脱オタした人がオタオタした人に説教する、脱オタ説教厨

inumash:で、逆に脱オタした事がアイデンティティになってるっていう、だから手段と目的が逆転しちゃってるんですよね。

似非原:だから、あれなんですよ説教厨だよね?青木さんって。説教という形では無くて〜物語の内部で、自分達がそうやって巣立っていく物語っていうのはアリだと思う。破壊するって形では無くてね。

Inumash:だから実はセカイの外部にいるように見えて、さっきの話じゃないですが内部じゃないですか?だって〜あの話って、一般の人達に言ったら誰も理解しない。

Masao:意識してやってるんだよっていう事も、アピールしているから痛々しいというか、全部に対してメタになってるんだけど、その立ち位置はありえないよ。

Inumash:今、アレやってるじゃないですか、木更津。あの視点は面白いといえば、面白いんですけど、実は90年代半ば、末位までにある程度音楽にコミットしている人達だったら、実はもうとっくに通過している地点なんですよ。あれは日常性とローカリティへの雲泥というか、そこのアイデンティティ化みたいなもの。で、非日常に関する欲求を、どうやって日常性の中で解消していくかっていう物語。

Republic1963:マッドチェスターみたいな?

Inumash:マッドチェスターは、あれは完全な非日常じゃないですか、そうじゃなくて、あの非日常を、どうやって日常中で付き合っていくかみたいな物語、でもそれってもう音楽の世界なら、もうとっくに90年代半ばくらいに、ドラゴンアッシュがあって〜椎名りんごがあって〜そこら辺で通過しちゃってるんですよ、僕らは。

Masao:俺なんかはエヴァンゲリオンって言われたほうがしっくり来るなぁ。

Inumash:かもしれない、それってもう通過してるものとして再生産して再評価してるだけの話であって、普通の人はもう、感覚的に通過しちゃっている所なんですよね。だから今流行ってる音楽って、もう余り自意識感じさせるものって無いわけでしょ?どっちかっていうとBGM化しちゃっている。そこにアイデンティファイする必要が無いと思うのですよ。

似非原:ちょっと僕は気になるんですけど、ヨイコノミライ読みましたよね?イズミさん。多分、この中では一番外部に立っていると思うので、その感想を聞いてみたい。

イズミ:好きなら好きでいいじゃん、と思う。劣等感?サークル内で一人一人が劣等感をい持ちながら、で好きなら好きでいいじゃんと思ってるんですけど、それを無理矢理肯定する事によって、そこに留まっている事ができる。実は自分オタクだっていうのを認めてもらいたい?オタクであることに劣等感がある事をを少なからず見えた。

Masao:オタクの特徴なんですけど、オタクっていうのは他の集団を攻撃しないんですよ。たぶん、ギャルとかの集団というのはオタクとかを見下す事によって自我を保っている。オタクは見下す対象を持たないで自分の中で溜め込んじゃうから、あ〜いう事になっちゃうと思う。

似非原:それは違うと思う、ギャルも実存的な内面を相当抱えてると思う。

Inumash:コミュニティーの力学はたぶん間係ないと思う、ギャルも攻撃対象あるわけだし、逆に被攻撃対象でもあって、攻撃される恐怖と実は戦ってるんだと思う。

キール:オタクにしても、最近は電波男とかが出てきて、恋愛資本主義ウゼーとか、または嫌韓流とか戦争論とかで、韓国中国ウゼーができる。ツールがあるか無いか、有ったか無かったかの差じゃないんですかね?

inumash:回路が接続されてないだけなんですよね。攻撃しないってのは。

似非原:いやだから〜この話で言うならば、一番オタク的なのは青木弟なんですよ。

Inumash:一個疑問があって、DMCにしろヨイコノミライにしろ、それぞれのコミュニティーの中にあるガジェットって出てくるわけじゃないですか、それが何処までリアルタイムにのっとっているかなって、ちょっと微妙かなぁ?って思ったんですよ。

キール:少なくとも、ヨイコノミライは結構リアルタイムだと思うよ。

imumash:でもDMCは実はリアルじゃないんですよね。

terasuy:これはもう、本当80年代とかになっちゃうんですよね?イズミさんが言ってるように、こういうメタルは最近のメタルじゃない。で、渋谷系もそうですよね、今ないじゃないですか、昔は流行ったらしいですけど。

inumash:本当に今笑えるのは、本当に今終わっている文化だから笑えるんです。

テラシィ:でもこっち(ヨイコノミライ)はリアルタイムだから〜丁度オタクが増えてきている。特にしょっぱな〜「お前等消費しているだけだろ?」って言ってるじゃないですか?今、本当に消費ばかりしているオタクばっか増えてきているから、まさに内面をえぐられる。

園:「それはいたいな〜」って感想を言う人っているんですか?ネットとかで

terasuy:痛いっていうか〜痛切って言われています。「これは辛い」読んでいて辛いって。

キール:いやぁ、辛かった。俺だって桂坂みたいな女の子と付き合った事あるもん。あ〜コイツはアイツだぁ、みたいな。手首切っちゃうところとか、僕達は世間からノケモノにされてるんだぁ、とか言うあたりとか、思い出して休憩挟まないと読めなかったね。

似非原:僕は20年前とあんま変わってるとは思わないんですよ。リアルタイムに変わった事って、救いが無くなったって事ですよね?

inumash:昔の救いってなんだったんですか?

似非原:究極超人アールとか?

masao:げんしけんは救いになってる

terasuy:げんしけんヨイコノミライの逆ベクトルって・・言われてるますよね?

キール:だから皆諦めてるっていうか、分相応のポジションに納まっちゃっているって所が、げんしけんのハッピーエンドに繋がった所じゃないですかねぇ?分相応に自分を把握しているっていうか、それに就活とかで外とも繋がらなくちゃいけないし。

似非原:そこはねぇ、素直に大学生と高校生の差って言ったほうが良いと思う。大ニ病なんです、たぶん。ってか、今大ニ病の定義って分かる人います? 俺は大ニ病って言うのは、「あ、そんな時代もあったね」みたいな感じなのが大ニ病なんですよ。大学生になると無駄に余裕ができちゃうから、「あ〜高校生の時、こんなんだった俺も」みたいな。

terasuy:過去の自分をネタにしながらも〜直視できるって感じですかね?

似非原:直視はしてないね、ネタ化して安全地域から見ちゃう。

キール:直撃されないって事だよね?

inumash:玉の返し方わかってますもんね。

似非原:直撃しちゃう人が痛いって思うわけでしょ?ヨイコノミライを見て。

(つづく)

「デトロイトメタルシティ」「ヨイコノミライ」でトーク vol.2

http://d.hatena.ne.jp/culcom/20061126#1164557402
前回(↑)のつづきです。前回の後半で登場したid:inumashさんが、音楽に関する深い造詣を披露。
http://d.hatena.ne.jp/inumash/20060827/p1
も読んでおくと、より楽しめると思いますよ!!


トーク参加者の紹介(間が空いてしまったので再び)

Masaoキールterasuyinumash
Ryota似非原republic下向き
イズミ:学生。教員志望。音楽、特にメタルへの造詣が深い。


本編

inumash:前提として、デスメタルってのはなにかってトコから話します。DMCって結構渋谷系へのルサンチマンの漫画だって見られてるんですけど、僕は実は全方位へのルサンチマンじゃないかと思ってるんですよ。単純なお洒落に対するルサンチマンだけじゃなくて、ルサンチマンを抱いている自分に対しても、結構バカにしてるんじゃないかと。で、その象徴がたぶん資本主義のブタだと思うんですよ。
資本主義のブタって、ステージの上ですっごい叩かれるじゃないですか。ステージの上限定のヒエラルキーでいうと、トップにDMCのバンドがいて、実はその裏に社長がいるんだけど。で、その下にファンが居て、(ステージ上ヒエラルキーの)外部にそれを貶めるモノとして世の中でお洒落と言われているような文化があって、でも一番下にいるのは、あの空間の中だけでいうとやっぱり資本主義のブタですよ。
でも資本主義のブタって、クラウザーさんを崇拝していて、クラウザーさんに何かしてもらって喜ぶっていう構図ができている。それって、DMCのバンドとそれを取り巻くファンの構図と、まったく同じなんですよ。ファンは資本主義のブタを結構バカにしているんだけど、実は資本主義のブタはファン自体の鏡である。
で、実は資本主義のブタっていうのは自分の生活をキチンと持っていて、自分は仕事だからやっているんだよというのをある種自覚しているわけじゃないですか。そこの世界を外れても自分の世界を持っているという意味で、実は資本主義のブタは、最下層ではないんですよ。
でも、DMCのファンはそうじゃなくて。彼等の実際の生活って、あんまり描かれていないですよね。確か2巻のエピソードで出てきたヒーロー物のバイトしてるっていう設定のファン。あのファンって典型で、DMCのライブに行きたいから俺はここで働いているんだって言ってるじゃないですか。その辺が結構明確に(資本主義のブタとファンは)違うのかな、と思っていて。そのひとつのサブカルコミュニティの中で、ファンはその「カルチャー」について解ってるつもりなんだけど、いやお前等「構図」解ってねぇだろっていう、そういうシニカルな視点が作者にはあるんじゃないかと。

Ryotaサブカルコミュニティ全体へのシニカルな視点?

キール:だから社長あんなに強いんだ(笑)。

inumash:社長はそのサブカルコミュニティのそう……なんというか神みたいな存在で、その人全部わかってるわけです。権力もあるし、実力もあってトップに君臨してるんだけど、前面に出てこないし、出てくる必要もない。世界を構築している存在だから。作者は全方位に向かって悪意を振り撒いているから、デスメタルを確かにバカにしてるんだけど、だけど(デスメタルの人から見ても)笑えるじゃないですか。渋谷系の人達も、自分たちがバカにされているけど笑える。ヒップホップやパンクの人出てたけど、アレもたぶん同じ構図。
で、全部ニセモノじゃないですか、アレ。DMC渋谷系もヒップホップもパンクも全部。そういうニセモノを崇拝しているコミュニティに冷めた視線を送っているっていうのが、作者の共通した視線だと思うんです。ニセモノ信者同士がぶつかってギャーギャーやってるんだけど、僕等はその外部にいるから、冷めた視点で笑える。だから敵を産まないんじゃないか。

キール:すべてのカルチャーに対して言えることですよね。オタクカルチャーにしてもなんにしても。

inumash:前にチラッと書いたんだけど、渋谷系……お洒落なモノに対するルサンチマンだけでDMCを語るのは、それは本質とは違うんじゃないかな。

Masao:確かに2巻から、渋谷系あんまり出てこなくなりますもんね。

inumash:そう。で、デスメタルっていま一番陳腐化してる音楽なんです。なんでかっていうと……もともと自分たちの鬱屈した感情とか社会に対する悪意とかを正当化するために悪魔っていうのを持ち出していたわけです、デスメタルの人達は。でも、たとえば90年代末にニルヴァーナが出てきてオルタナティブエクスプロージョンが起こって、そういうネガティブな感情をストレートに吐き出すと言う表現形態自体が肯定されたんですね。で、その後ギャングスタとかハードコアラップが流行って、直接的な暴力を歌うことも、もう肯定されてるんですよ。だからわざわざ悪魔を呼び出さなくても、自分のネガティブな感情は吐露できるし、暴力衝動をそのまま発散するっていうことも、実は受け入れられてるんですね。なんで、「なんで悪魔を崇拝するのか?」っていう理由が、いまは一切ないんです。悪魔は殺されちゃったんです。ニーチェじゃないけど(笑)*1
でもなんで悪魔を崇拝してるかっていうと、それだけ閉じたコミュニティの中でそのコミュニティを成立させるための手段のひとつにしか過ぎない。そういう構造が見えてるから、僕等はたぶん笑えるんですよ。

キール:あぁ、裏側を見てるって、結構思いますもんね。

inumash:(DMCで登場する)コミュニティで起きていることは、絶対自分には向けられないじゃないですか。そこまで実体化された中に僕達はいるわけじゃないから。外部に居る安心感があるから、僕達は初めて安心して笑えるんですよ。

Masao:全部のジャンルでシンボルが出てきますもんね。パンクのときはシド・ヴィシャスがずっと出てきてたし。

inumash:で、ラップのプロフィールも人も典型じゃないですか。ニューヨークに産まれて……だし。

キール:その構図だとアレですよね。ツンデレの構図と同じですよね。観客の側から見れば彼女のツンの部分もデレの部分もわかっていて、本音の部分もわかっているから楽しめるし、彼女のツンの部分がこっちに向かってこないから、安心して楽しめるというか。

Masao:読者は神の視点を持っているっていう。

キール;リアルなツンデレなんて相手にするとたまったもんじゃないですから。

inumash:たぶん、読者の視点て社長の視点なんですよね。神の。価値観は別にして。

似非原:でも、社長もニセモノくさくない?一応カネ持ってて、一応権力者みたいにやってるけど、なんていうのかな……「げんしけん」をダシにして言うと、会長みたいな立場ですよね。会長が会長として振舞えるのは、そのコミュニティの中だけなんですよ。
(考え込みながら)だからシャチョー〜……社長をどう考えるかっていうのは難しい問題ではあるんですけど、2つパターンがあって、社長もやっぱりニセモノだっていうのと、社長はなんだかんだ言って全部のところでああいうことしてるから、ああいうふうにならざるを得ないっていう。だから、「ホンモノだから」「ニセモノだから」っていうのがあって、どっちがいいかは判らないけども、そういう考え方はできるっていうのはあって……。
ただ、リアリティっていうか、コレを読んでる人からすると、なんていうかな、「ニセモノ」っぽいほうが多い。うん。

inumash:でも、じゃあニセモノがいけないかって言ったら、そうでもないわけじゃないですか。

似非原:あー、そう。そうでもない。そうそうそうそう。

inumash:結構ほら、DMCで共通して出てくるエピソードで「産まれてすぐ殺してくれ」とかあるじゃないですか。そういうのって音楽の世界でもそうなんですけど、結構ザラにあるニセモノエピソードなわけじゃないですか。一番北端にあるのがデスメタルの悪魔とかであるだけで、例えば12歳でどこかのコンクールで優勝したとか、誰かに認められたとか、ニセモノエピソードがあったりとか

republic:外国人レスラーのプロフィールみたいな話ですね。

inumash:そうそうそう、だからそういうのに共通する、なにかニセモノを作り出す構図みたいのがあって、その構図を僕等は知っているから、そこでDMCっていう過剰なモノが出てきたときに、「あ、なるほど」って笑えるんだと思うんですよ。

似非原:あとDMCは、内面を描いてないじゃない?さっき言ったのは「ヨイコノミライ」にも当てはまって、無理矢理繋げるんですけども、同じなんだけども「ヨイコノミライ」は内面を描こうとするから痛くなる。DMCの場合、それはギャグ漫画の作法でもあるんだけど、内面を描こうとかいうわけではないので、うん、そんなには痛くはない。

inumash:でも実際、DMCの信者みたいな人達っているわけじゃないですか。この人達も実は内面があるんだけど、そういうのを掘り下げていくと、たぶんビジュアル系のファン特集みたいになって、正直言って僕等は直視できないものになるわけですよ。痛いから。たぶんそれをやったのが「ヨイコノミライ」で、そこまで絶対踏み込まないのがDMCじゃないのかな。

キール:確かに「ヨイコノミライ」はなんというか……頭空っぽにして消費はできないんですよね。ハッキリ言って。

inumash:絶対なんか自分たちの過去の記憶が(キャラの)内面に結びつくじゃないですか結びつくじゃないですか。

キールDMCはホントに「あー、バカだな。おかしいな」って消費できるけど。

似非原:あ、ソレはね。もうひとつあって……DMCは、コミュニティはコミュニティで、こいつら幸せだからいいじゃんみたいなところがあるじゃないですか。で、ヨイコノミライを見て思い出すのは、これはある意味ね「オタクを嫌悪するオタク」の欲望の物語だったりするわけなんです。要するに、「オタクってキモいよね」と言うことでアイデンティティを保とうとするオタクっていうのが存在してて、俺なんかは(自分が)そうだったからわかるんですけど。

inumash:ある腐女子のサイトを運営する腐女子が「腐女子って、自分より下のモノを見つけて見下すから嫌い」って書いてたんですよ。それにブクマした人が「これは優越感ゲームを楽しみたい人の典型だ」と書いていたんです。だからソレはたぶん、「オタクは」っていうよりも、そういう優越感ゲームを楽しみたい人は音楽の世界にもいるし、スポーツの世界にもいるし、もっと別のコミュニティにもいるし……横の線としてどういう切り口をするのかっていうところで変わってくるのかと。

republic:アレですよ。体育会はいつも大会とかあって、序列が決まるんだけど、文化系はは大会がないので、結局その……なんらかの方法でランク付けをせざるを得ない。

inumash:数値化できないのが、たぶん痛いですよね。たとえばアレ……アジカンか。アジカンが部活かなんかで結成してデビューしたんだけど、そこに対するやっかみっていうのが、やっぱり凄いあるらしいんですよ。「あんなの、UKのロックのパクリじゃん」みたいな。
メジャーデビューっていうのは一種の「あがり」なんだけど、それを素直に評価できない人達っていうのはやっぱりいるんで。でもそれが、たとえば100Mを9秒で走るとかちゃんとした評価基準があると、違うと思うんですね。たとえば「100万枚売れた音楽は絶対に良い音楽だ」みたいな評価基準。でもそれがないから。「100万枚売れてても、俺は認めない」っていうのが出てきちゃうんで。

terasuy:オタクのアイテムってのは、ホントに評価が難しいですよ。特に、ライトノベルとかあるじゃないですか。今もあまり上手いとは言えないような文章で刊行されてる作品がありますけど、ホントに「こんなの俺でも書けるよ」っていう人が、意外と多いと思うんですよね。同人書いてる人とか。でも、そういう人達のランク付けってできないじゃないですか。メジャーに行けば、売り上げとかアニメ化とかしただけで、それなりの位置に行くことができますけど、でも同人の人達って「自分の作品のほうが売れる、でも順位付けできない」みたいになって、そうするとコミュニティの中で内面をえぐり合うしか手段がないのかなっていう。

キール:あー、衣笠と桂坂だよ!オタク作品に触れてるけど、「君のは下劣だよね」みたいな。

似非原:これ、構造として僕が面白いと思うのは、文学青年のアレですよ、代理戦争なんですよ。要するに商業主義と芸術主義が対立してて、この話もそうなんですよ。「G線上ヘブンズドア」っていうのもあるし、もっというと平野耕太の「大同人物語」っていうのもある。大体は商業主義といかに闘うかっていうのがあって……

inumash:でもそれはもっと大きいところから見ると、実は商業主義に絡め取られているところもあって……例えばマッチポンプって言葉があるわけじゃないですか。特に音楽業界でよく使われるのが、誰かと誰かという対立構造をつくってシーン自体を盛り上げている。
DMCにも「シーンで一番ヤバイ奴は誰だ」って書いてあって思ったんですけど。じゃあ誰が一番得するって言ったら、実はこれを動かしている社長なわけですね。まぁ社長本人というか、業界の人たち。(DMCとか鬼牙とか)当人からしてみたら、この人たちと絡む必要はないんですよ、本来なら。だって、全然文脈が違うわけだから。そこで並べられる必要はないんだけど、並べられてしまう。で、それによって得をするのは誰かって言うと、確かに観客は面白いから喜ぶんだけど、実は業界の人達……レコード会社の人達にお金が入っていく。
で、負けた人たちっていうのは、以降出て来ないですよね。使い捨てられるわけですよ。勝った人だけが、利益の一部だけを吸収することができる。そういう構造が日本の商社にもあるわけだし、ラノベとか同人業界にもあるのかも知れない。

キール:その両者の間で繋がっていることは、狭いんだよね、とにかく。とにかく狭くって、普通の人っていうかカタギの人からすれば、「なんでそんなことでこだわってるの?」みたいのが、たぶんどっちにもあるっていうか。ヨイコノミライにしても、自覚してるオタと無自覚なオタっていうか、なんというかくだらん内ゲバというか、まぁどっちもオタじゃんっていう話になるし……

inumash:落ちたところがすっごい曖昧なところに落ちた気しません?

似非原:んーだからね、なんていうか俺ね、「ヨイコ」のアレとかね、ちょっとヤバイと思うんですよ。ヤバイというか俺ね、気持ち悪さを感じてて、肯定しちゃいけないと思うんですよ。肯定というか、「みんな一緒だよ」って終わるじゃないですか。すっごい気持ち悪いと思って、正直それは。

inumash:断絶が描かれていない?

似非原:断絶っていうかね、なんて言ったらいいのかな、ある意味全脳感の物語なんですよ。みんな全脳感を持ちたがってて、全脳感同士がぶつかり合うとどっちが支配するかっていう物語になっっちゃうわけですよ、どうしても。それは矯正されないといけないんですよ。どこか。

Masao:でも、それの暗黒面におっこちちゃったのが……なんでしたっけ、眉毛のぶっとい女の子……平松さん?それはちゃんと描かれてるんじゃないですかね?

terasuy:最終的にはいくつかのパターンに分かれましたよね。

inumash:アレってでも、全脳感の内面化ってこと?

Masao:もう……そういうことですね。外に行けなくなって、自分の中の世界に引きこもるしかなくなっちゃった。

terasuy:妄想に浸っちゃった。

republic:でも、あのデブの娘が……

terasuy:脱出できたんですよね、あのコミュニティから。

republic:そう。それを肯定して終わりの話なんじゃないんですかね?

Masao:んー、そういうのも見せつつも、駄目なヤツは駄目っていう。

下向き:要するに、救われるヤツと駄目なヤツのパターンを、包括的に描き出した。

republic:でもこんな……ヤバイ人達が集まってるサークルは……ねーじゃんみたいなところは(笑)

キール:だから、その人達をギュッと集めたのが、「ヨイコノミライ」ですから(笑)。

inumash:じゃあ、ソレを薄くしたのが「げんしけん」?

terasuy:でも、向かう方向が違うじゃないですか、「げんしけん」の場合やっぱり。

inumash:でもホラ、「げんしけん」の場合ずっと「ヌルいオタクの物語」って言われてるじゃないですか。でも「ヨイコノミライ」の場合、「ヌルいオタクの物語」かって言われたら、微妙な感じしますよね?「ヌルくねーだろ!」っていう。

(この発言で場が騒然となる)「え−、それは結局内面の……」「ヌルくない……のかな?」「いや、それは……」

似非原:ヌルい……と思うよ。俺は。

republic:ヌルいんじゃないかなぁ?

terasuy:ヌルいですよね?だって、初めから言ってるじゃないですか、「消費者にしかなれないのよ」みたいな。

Masao:それは、ひらがな「おたく」とカタカナ「オタク」の違いじゃないですかね?みんなカタカナ「オタク」が出ていて、主人公の男の子(井之上君)だけは、ひらがな「おたく」っていう。

似非原:あ、そういうことか。

inumash:あぁ、確かに被りますよね主人公。ポジションが。

キール:そうなると、アレは例えば世代間闘争みたいのの比喩としても読める?

Masao:あぁ、そういうふうにも読めますね。言われてみれば。

キール:作者は年代から言って……ひらがな「おたく」?年代っていうかまぁ、マンガ描いてるからひらがな「おたく」のほうだろうし。

terasuy:基本的に、想定してる人を絶望に持っていくような描き方ですからね。どっちかっていうと、ひらがな「おたく」のほうになるんじゃないですかね?いまの(カタカナ)「オタク」っていうと、やっぱり消費じゃないですか。

似非原:そうかな〜?俺、絶望的ではないような気がするんだよなぁ……。何が最終的に勝つかっていうと、好きなことを好きって言った人が勝つってだけの話なんですよ。そこでくだらない優越感ゲームを持ち込んでるから、グダグダになっちゃうっていう。だからあの占い師の人(平松さん)だって、自分が占いが好きだからってトコから始まってるじゃないですか。でね、ああいうのって非常に困るんだよね、ホントはね。

inumash:でも「ヨイコノミライ」の物語って、ガジェットがオタクを使っているだけで、舞台とか描かれている物語って、結構普遍的なものだと思いませんか?

下向き:要はオタクっていうよりは、精神病理とか自己愛、自意識の問題っていうのを、オタクを通して描いている。

inumash:これを90年代前半まで持っていったりすると、「あすなろ白書」とかになったりするのかなっていう。

キール:「あすなろ白書」って、話覚えてないな……なんか、世界は全然反転しちゃってる気がするんだけど(笑)

inumash:でも、フォーマットは一緒かなって気はするんですよね。

似非原:で、アレを精神病院で描いたのがアレですよ。「勝手に改造」ですよ。アレの最終回っていうのは、「別の世界があって、そこでちゃんと関係性を作ろうね」っていう終わり方をしたじゃないですか。

下向き:アレ、最終回どういうふうに終わったんですか?

inumash:アレ、あの子達は実は全員病気で、病気のリハビリのために「トラウマ町」という架空の街を作って、自分達だけで生活していたっていう設定なんですよ。で、ラストは羽美ちゃんと改造がトラウマ町を出て新しい世界に旅立ち、チタン君だけが町に引きずり戻される。

似非原:そうそうそうそう、まったく同じだよね。チタン=平松さん。だけど、また覆しちゃうんですよね。単行本でまた最終回描くんですけど、そのときは、「幸せだったらべつにそのままでもいい」っていう。だからそこのところってなんていうか……ある意味ではリベラリズムで待つのか……僕は、ハッキリさせておいたほうがいいと思うんですよね、そこんところは。「そこのコミュニティだけでいいんだよ」っていうのは、僕は(そういう志向は)強くない……うん。

inumash:たとえば同じような話って、「DMC」でも描こうと思えば描けるじゃないですか。ちょっと前に話があった、世界大会みたいなネタ。アレに出る物語って今進んでないけど、でも実はアレって別な世界とぶつかって、もしかしたら自分が潰される可能性ってあるわけですよね。たとえばスウェーデンのなんとかってバンドがライバルとして描かれていたけど、アレにボロボロに負けることによって「DMC」って世界自体が崩れるってこともあるわけじゃないですか。で、初めてそこでクラウザーさんが本人に戻って再出発するっていう物語も、描こうと思えば描けますよ。でもギャグマンガだからたぶんそうはならなくて、コレは勝手なネタの予想なんですけど、実はそのスウェーデンのバンドもまったく同じで、実はフレンチポップがやりたいんだけど、(メタルを)やらされている(笑)で、セットの裏では意気投合して喜ぶんだけど、実際ステージの上ではボコボコにやり合うっていうのが一番ギャグマンガとしてはおもろいんじゃないかな〜と(笑)

似非原:え、だけど……このマンガっていうか……古谷実?あの人のマンガって、僕シガテラまでしか読んでなくていま一番新しく連載してるのはそこまで読んでないんですけど……古谷さんが決定的に失敗してるっていうかどうしても描けないものっていうのは、中間の物語なんですよ。要するに、そのコミュニティから脱退して新しいコミュニティに入る中間っていうのが、決定的に描けないんですよ、あの人は。そこが一番重要なんですよ、僕に言わせると!そこんとこの飛躍っていうのを肯定しちゃ絶対マズくて、そこが一番重要なのにも関わらずそこを飛ばしてしまうっていうのは、構造としてどうしてもある。マンガの構造として。

inumash:日本映画で、確かそういうのありましたよね。元オウムの子供たち……「カナリア」。アレがたぶん、ロードムービーの形を介した中間の物語なのかなっていう。なんて言いましたっけね、アレ?

キール:「ドカベン」は最初柔道やってて、その後野球行っちゃったんですけど、昔のマンガって結構そういうふうに「ポンポンポン」と移り変わっていく……スポーツにしてもギャグにしてもシリアスにしても。そこで挫折して次のトコ行く、みたいな。いまはそういうのって、あんま見ないというか。

inumash:なんか、その世界での否定が個人の全否定に直結している感は確かにあるかも知れない。

キール:そうですよね。だからその虚構を(どうやって)持たせるかで、ガチガチガチガチやってるっていう……

inumash:強度だけがひたすら高まっていくっていう……

似非原:んー、それはなんていうか……ある意味マンガの政治的な構造というか、特にギャグマンガがそうで、なんていうのかな、要するに構造がキッチリしちゃうとその構造から外に出られないっていうのがあって、それはなんにでも言えるんですけど……

キール:「ヨイコノミライ」の主人公というか、メガネ君の男の子。あの子がもしサッカー部を兼任しながらマンガ部にいたら、たぶんダルくなったらそのままサッカー部に行っちゃって、マネージャーの娘とよろしくやってるっていう可能性も描かれていたのかも知れないわけですよね。ヨイコノミライはみんな専業オタクなわけですよね。

Masao:んー、じゃあ瞬君や一輝君(衣笠兄弟)はどうなんですか?アレはいろんなトコに足突っ込んでいて、だからこそ健全な人間として描かれている。

terasuy:いや、一番まともな人間ですよ。

下向き:一輝君はまともだけど、瞬君はまともかっていうと、ちょっと(笑)

terasuy:(笑)でも瞬君て、一番まともに若者を描けていると思うんですよ、僕は。高校生って、こんなんじゃないですか。

キール:いや……俺、男子校だったからわかんねーよ(笑)女なんかいなかったから、みんなアレだよ?どうでもいいや、みたいな。なんか「女食えりゃいいや」みたいだから、なんかこう衣笠弟みたいに「同じ場所で女作っちゃいけないよ」みたいに考えていないというか。

似非原:それはサークルクラッシャーみたいな?

キール:衣笠弟は、たぶんサークルクラッシュ一度経験してると思うんだよね、あの人は。

terasuy:そこまで行間が読む……?(笑)

キール:だってそこまで行動を起こせるってことは……だってこの歳の男の子が、ねぇ?

inumash:いやあるよ、そういう高校。

下向き:自分の所属するコミュニティで恋愛しないっていう若い子は、割合多いと思う。

(つづく)

*1:偉大なる哲学者ニーチェは、「神は死んだ」と申しております。

第2回カルコミュトークの告知「ぼくたちわたしたちのクリスマスって何?」

第2回の詳細が決まりましたので告知をしたいと思います。

  • 日程
    • 12/17(日)夕方からを予定
  • 場所
    • 六本木、恵比寿周辺のカフェ
  • テーマ
    • 「ぼくたちわたしたちのクリスマスって何?」
      • 都内のクリスマススポットでのフィールドワークを通し、日本人にとってのクリスマスとは一体何なのか?ということを、フランクで軽い話題から、思想めいた話まで、ざっくばらんにクリスマスについて語るイベントになります。あの頃のクリスマスってこうだったなぁとか、今はこうだよなぁとか、自分の実体験の話で盛り上がるもよし!日本人のクリスマス信仰に一言申してもよし!!とにかくクリスマス目白押しのトークをしようではないかという企画です。



参加希望者はterasuy777@hotmail.com、もしくはコメント欄等までご連絡下さい。
年齢、性別関係なく、興味がある人はふるってどうぞ。


参考「カルコミュトークとは

「デトロイトメタルシティ」「ヨイコノミライ」でトーク vol.1

概要

11/18(土)
原宿の喫茶店「カフェアンセーニュダングル」にて17:30集合。未読者の為に主催側が持ち寄った、コミックの読書タイムを1時間設けた後トークをスタート。ICレコーダーで収録。

トーク作品

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

ヨイコノミライ完全版 1 (IKKI COMICS)

ヨイコノミライ完全版 1 (IKKI COMICS)

トーク参加者の紹介

Masaoキールterasuyinumash
Ryota似非原republic下向き
イズミ:学生。教員志望。音楽、特にメタルへの造詣が深い。

議事録

キール:私みたいにアニソンと同人音楽やサントラしか聴かないような人間には、ギャグ以外の何物でもないのですが、イズミさんのようなメタルに詳しい人にはどうなんですか?DMCは?
イズミ:ギャグですね。メタルって音そのものが世界観を表しているものなので
terasuy:これはじゃあメタルではない?
イズミ:いちおうデスメタルのジャンルには入る。
terasuy:じゃああんまりこういうのは最近はいない?
イズミ:古い
terasuy:希少種みたいな?
イズミ:メタルってジャンルからボーンと飛び出たような感じ。漫画とかの絵からだと音が分からないから。日本だと聖飢魔IIとかセックスマシンガンズとかああいうのをイメージしてもらえれば。



ここでMasaoが持ってきたDMCの元ネタ資料が配られる

Masao:渋谷系から結構引用しているところが多くて、全話の引用元が載っている
terasuy:つまりこれは音楽を可視化させるために、無理やりこういう格好にしているんですかね?デスメタルって。
Masao:えーと、聖飢魔IIってメタルなんですか?
イズミ:ロック。あ、でも、メタルに入るのかなぁ…。
terasuy:中途半端なところなんですか?
イズミ:メタル寄りかな
Masao:ルックス的にはメタルの人っていうのはああいう格好をすることが多いんですか?
イズミ:今は無い。聖飢魔IIって80年代からずっとあるじゃないですか。80年代のメタルはああいうのが多いけど、今は普通の格好をしている。
Masao:カジュアルになってきたみたいな所が?
イズミ:音楽の質もそう。よくプライドとかK-1とかの格闘技の冒頭部で流れているものとか。選手入場や選手を紹介する時の。あーいう時に流れるのがメタル。
皆:あー(納得)
キール:FFとか聖剣とかのボスシーンの音楽。
イズミ:そうそう、ロマサガとか。
下向き:なるほど、凄いイメージが湧きました。
Masao:アニメタルは聴いてましたよ。あれはどうなんでしょう?
イズミ:あれはー、ロックに近いんじゃないでしょうか?えっと、ドラムとかってわかります?
terasuy:どういうことですか?
イズミ:ドラムがどういう風に配置されているとか。足で打っているのがあって、両足でガガガガガガって。わかるかな、ロマサガ3のラスボスの音楽。どこどこどこどこやっているの、あれ足なんですよ。
キール:あれ足なんですか!?
イズミ:あれでメロディーを作っている。メタルはそういうドラミングが多い。
terasuy:じゃあこれは(DMC)はどうなんですか?
イズミ:足見えないけど、やってるんじゃないかな?歌詞とか見るとシャウトだし。

ここでMasaoが持ってきたファッキンガム宮殿のDMC音楽を流しはじめる。

Masao:ここに同人で作っている人の音楽があるんですけど、これってどうなんでしょう?
キール:ファッンガム宮殿の!
園:え、これがDMC音楽?
terasuy:これはもう完全なメタルなんですか?
イズミ:そう、ガタガタガタガタやってるだろ?


皆:(聴き入る)


Masao:結構テクニックを競い合うような肉体派の音楽なんですよね?メタルって?
イズミ:そうです、僕もドラムやっているんですけど、ツーバスをやるとここ(足を
押さえて)の筋肉がすごいことになるんですよ。


皆:(また聴き入る)


Masao:これ結構クオリティ高い(笑)
terasuy:じゃあかなり肉体的なもので男らしさを象徴しているのかな?逆に根岸は。
Masao:渋谷系なんですけど、フリッパーズギターとか聴いていると男のくせになよなよしやがってみたいな、小沢健二とか思い浮かべてみると分かると思うけど。男はやっぱり思いがちじゃないですか。そこのギャップを売りにしているんだよね。
terasuy:あれは渋谷系と呼ばれるものなんですよね?
Masao:あとからそう呼ばれるようになった。
terasuy:あー、確かに作中でも下北とか…
Masao:根岸くんはよくカヒミカリィが大好きって言ってるじゃないですか。コーネリアスっていう小山田圭吾の、あの人がカヒミカリィをプロデュースした。で、その人は小沢健二と共にフリッパーズギター渋谷系代表みたいな感じだったんです。
terasuy:確かにオザケンって言われるとイメージ湧くかもしれない。
Masao:そうそう、オザケンなんですよ。渋谷系は。
terasuy:が、こいつになっちゃった(DMC根岸をさして)
Masao:それが逆に肉体派のメタルをやる羽目に何故かなってる。
terasuy:やりたいことが出来ない若者みたいな(笑)


キール:この中のデスメタルってなんでファックだファックだと言ってるんですか?
イズミ:日本人が作る音楽の歌詞って綺麗なんですよ。文章になってて。外国ってこんなのばっかなんですよ。普通に直訳しても意味不明な、何言ってんのこいつ?みたいな。ノリっていうのかな。
園:断片的なんですかね歌詞が。


イズミ:スレイヤーってバンドとか聞いていると、鬱になりがちなもので、悪魔崇拝とかがよくあって。あの、生き血を浴びた奴、なんだっけかな。
キール:エリザーベートでしょ?
イズミ:そう、それがモデルの歌とかもあって。
皆:はー。


キール悪魔崇拝っていうか、アンチキリスト的なものって多いですよね。メタルとかビジュアル系にしても。ゴスロリのゴスにしてもそうですし。なんかあるんですかね?アンチキリストに繋がるものが。
イズミ:アンチキリストというか…うーん、反倫理?


Masao:資本主義の豚とかはどうなるんですかね?(笑)
キール:そこんところが繋がらないというか、マッチョイズムからそういうのが出てくるんじゃないかと思ったので。
terasuy:根岸との対比をさせたいが為にやっているのでは。こういう顔も最近はないっていうじゃないですか、で肉体的なメタル音楽、そうやって対比を強調させるというか。
下向き:描きやすくするために文化をデフォルメしている。
terasuy:やたらこれ、やりすぎっていう感じが(笑)


園:作者が描きたいのはどっちなんですかね?渋谷系デスメタルと。
下向き:あとは音楽そのものを描きたいのかどうかっていうのもあるんだろうし。
園:どっちの人間性を描きたいのか、作者がどっちに思い入れをしているのか。両方を両方とも好きな人はあんまりいないし。
Masao:葛藤を描きたいんでは?
似非原:そうそう、葛藤なんだよ。
下向き:でもこれ2巻以降見てみるとそうでもない。
terasuy:そうそう、ここで吹っ切れてますよね。1巻の終わりで。
似非原:いや、例えば病気の子の所に行ってあげる点とか。そこで葛藤が見え隠れしている。
Masao:根岸君がそういうキャラなんですよね。
terasuy:はっきりしない男みたいな。行ったり来たりで。
似非原:ある意味で現実味があるんですよ。はっきりしない奴の方が吹っ切れたらやばいよって。
terasuy:確かにジャックが言ってますよね。お前みたいなのが一番恐ろしいのかもしれないと。
皆:なるほどねー。


キールDMCっていう漫画は1巻か2巻くらいで多分終わってたと思うんですよ。ペース的には。ただ放蕩オペラハウスとかのレビューサイトで持ち上げられて一気に有名になって、タワーレコードにまで侵蝕するようになったっていう。
園:この漫画ってそんなに売れたの?
terasuy:アマゾンでめちゃくちゃ売れたとか。
キール:凄い売れたよ。2巻でタワレコだよ。
Masao:けんちゃんの最後にそのいきさつが書いてあったような。確かこれも最初は読みきりで終わる予定だったらしいんですよね。


下向き:皆さんDMCどこで知ったんですか?
キール:私はネットのレビューで。
Masao:俺はrepublicさんのレビューで(笑)
republic:私はアニマルは購読してますんで。
terasuy:ちなみにこれ、毎日新聞に載ったらしいですよ。
イズミ:渋谷の東急に展開されていたよ。売り子さんの女の子が「デトロイトメタルシティが発売です」みたいな。
皆:ふぇぇぇー。


下向き:例えばサイトとかアマゾンではどういう受け取られ方をされているんですか?
キール:ちょっと見た感じだと、デスメタルの人を馬鹿にしているんじゃないかみたいな。ギャグとして捉えていない人がちらほら。
Masao:それに対して、渋谷系の方が馬鹿にされているっていう渋谷系の人の意見が入ってる。
下向き:じゃあわりかし音楽漫画として見ているみたいな。
terasuy:そうですよね。馬鹿にされていると感じるのは、ネタとして見れていない所が。何かしら自分のそのなんていうんですかね。
Masao:あー、自意識を刺激するところはありますよ。根岸君みたいな勘違いオシャレみたいな人はちょっと辛いんじゃないですかね。
terasuy:あー、まさにこれヨイコノミライじゃないですか(笑)
Masao:えー、これそこで繋がるの(笑)


キールDMCの場合アメリとか具体的な下北沢とか地名とかを挙げているからじゃないですかね。ちょうど消費していた人が、アメリいいなぁって思ってたのだがDMCがあー、みたいな。
皆:それはわかるかも。
キールGTOと同じで、あれもスニーカーが流行った時にエアマックス云々とかプレステ2が云々とか。すごく身近なネタというか具体的な名詞を挙げてネタにしているんで、それと同じで。
園:じゃあ今もGTOって読み返すと恥かしかったりするのかな。
キール:あー、でもこういう時代あったねとか。
似非原:でもあれは悪い方向ではないじゃん。
Masao:GTOは名前は出てくるけどネタにはされていないから、自意識とかは傷付かないんじゃ。
terasuy:こんなギャグ漫画で自意識を刺激されるってのも可笑しな話はありますよね。
Masao:いやぁ、でも根岸君の歌詞とかで、チーズケーキ焼いてたさぁーん、とかそういう歌われ方しているから(笑)実際こういうのが大好きで路上で歌っているような人にとっては、俺こんなかよって思っちゃうんじゃないかな。
園:俺もリアルタイムで渋谷系を聴いたわけじゃないけど、フリッパーギターとか好きだったからフォロワーみたいな人がいて、そういうのがネタにされているのは初めて見たから。漫画とかで。だからそこで過剰な反応があったんじゃないかな。
terasuy:いい傾向と言えばいい傾向のような。
Masao:確かに馬鹿にされる対象ではなかったですからね。オシャレって持ち上げられる対象だったから。
似非原:いや馬鹿にされる対象ではあったんだけど、メジャーには出てこなかったっていう。
terasuy:サイレントマジョリティーじゃないですか(笑)
皆:(爆笑)
Masao;だってヤンキー文化とかで、小沢健二とかなにあの男女とか言われていたと思うんですよね。ただ雑誌とか作る人達は文化系の男達が多かったから、表には出てこなかったのかな。
似非原:でも矢沢イズムとか。渋谷系からすれば矢沢って、なにあの汗臭い男って思われていた。
園:矢沢永吉とかって単純じゃないですか。見なくてもわかるっていうものを渋谷系は馬鹿にしていたと思うんですよ。俺たちはそんな分かりやすいことをやりたくないって。でもこの漫画では渋谷系そのものが、分かりやすい存在として描かれてしまっている。
似非原:難しいのは、メタ的に言うと、分かりにくさを求めるっていうのが既に俺は分かりにくいから高尚なことをしているんだぞ、っていう自意識の表れに過ぎないんだよね。って簡略化できるんですよ。
Masao:そこを突かれているから痛いわけなんですよ。
園:オシャレなものがわかる俺、みたいな。
似非原:そうそうそうそう。
Masao:そういうことを言えるようになってきたのも、渋谷系が古くなってきてメタに見れるようになってきたんですよ。かっこ悪くなってきたよっていう。


下向き:そういう方向から消費している人って多いんですか?ようはコミックという文化系のメディアの中から渋谷系を馬鹿にしました、みたいな。ポップメイキングの話なんですけど。
Masao:レビューサイトを見ているとそういう人もいますけど、基本的にはギャグマンガとして消費している人が一番多いですよね。
下向き:1巻と2巻って反応の違いとかってあるんですかね。
Masao:そこまでは感じないかなぁ。


republic:でも、今、渋谷系とかださいでしょ?
皆:(爆笑)
似非原:まぁまぁ、その通りなんですけどー。
republic:いやあの、実際にサブカルのオシャレさとして渋谷系を持ってくることしか出来なかったのが、今のサブカルの文化なんじゃないかな。
似非原:クイックジャパンとか?


似非原:僕が思ったのは園さんがさっき、どっちの人格が愛されているかっていうので。さっき考えたらメタルの方が愛されていると感じるんですよね。馬鹿にされながらもシニカルじゃないんですよ。
園:誰に、作者に?(馬鹿にされているのが)
似非原:作者に。
terasuy:確かにシニカルではなくて、最後は吹っ切れてますし。
園:でもその根岸っていいものとして描かれていない。
似非原:表現方法として、俺にはメタルしかなくてメタルで戦っていくわけじゃないですか。それって結構表現とかを考えると重要なポイントじゃないかと思うんですよ。
republic:どっちが頭がおかしいかと言うと間違いなく根岸じゃないですか。
皆:まぁ確かに(笑)
似非原:頭おかしいとかの勝負ではなくて。俺の曲を馬鹿にするなって所もあって、わりかし受け容れている感がある。
Masao:2巻の最後の方ですよね。偽者が出たところ。
似非原:そうそう、わりかしメタルへの愛っていうのが。
terasuy:受け容れて徐々にペルソナの自分と同化していっているところがありますしね。
似非原:そう、凄い面白いのはある意味では、"これって僕のやりたかったものと違う"って風ではなくて、"これもやりたかったもの"という方が自意識が傷付かないってところがあって。あのDMCでお遊戯なら他の店でやってくれない、っていうのがあって、考えざるをえないよね。
皆:あれはひどい(笑)


Masao:だから好きなもので食えなくて否定されちゃったから、才能あるほうに行かざるを得なかったところがあるんじゃないですかね。好きより才能を選ぶしかなかった。
terasuy:僕はそこが作者が描きたかったんじゃないかなって思ったんですよ。自分のやりたいこと出来る人って一握りなわけだし。
Masao:俺がシューティングゲームやりたいんだけど、オシャレにならざるを得なかったみたいな(笑)
terasuy:それはちょっと(笑)
Masao:まぁでも描きたいのは音楽だと思いますよ。音楽をネタにギャグやりたいんでしょうね。初期作品集を見ると音楽好きだっていうのが伝わってくるし。校舎の落書きでジミヘンだかスミスだかの名前が書いてあったりして。
似非原:作者自身が渋谷系をやりたかったから、なんで俺漫画描いているんだろう、みたいな。
Masao:そうなのかぁ?(笑)
terasuy:作者はどんな音楽が好きなんですかね?
Masao:そこはまだ見えないですよね。
園:作者のサイトとかってあるんですか?
Masao:それはわからないなぁ。
terasuy:これどちらか好きだとしたらチャレンジャーですよね。苦悩しながら描いているのでは。
republic:渋谷系なんじゃないですかね?渋谷系の挙げるアイテムがあまりにもリアルすぎる。
Masao:確かに。今渋谷系をやっている人って恥ずかしながらやっているんじゃないですかね?90年代の初期だとナチュラルにカッコよかったんだけど、今は痛いけど好きだよみたいな。
園:どうして痛いんですかね?
terasuy:感覚的に痛い感じは分かりますけどね。
Masao:なよなよしてるからね。マッチョイズム的には認められないんじゃないかな。
下向き:音楽の内容が痛いんじゃなくて、渋谷系を消費する人々が痛いんじゃないですかね。消費者達の自意識の持ち方とか。
republic:今、現役の学生の皆さんに伺いたいくらいですよ。今、大学では何が流行っているのかとか。
似非原:友達がいないから…(笑)

ここでinumashが到着。自己紹介ののち、これまでの流れを説明し会話に参加。

republic:ようは軽音サークルにいる渋谷陽一を見ているから、何が凄いっていってるのかっていうのが非常に興味がある。軽音とか例えば、学祭とかでは誰のコピーバンドが流行っているとか。まさかスミスじゃねーだろと。
似非原:僕は大学の関係上、ノイズが凄い感じで。
Masao:明大はノイズの聖地?
似非原:いや、そうではないと思いますけど。凄い人がいて。明大生っていうか、大体偏差値60くらいの学校ってこじらせ系が多いんですよ。頭では勝てないから他でこじれちゃう。
Masao:60で勝てないってのもなぁ。
似非原:ようするに吹っ切れないんですよ。頭良くなっちゃったから。ここまで。
terasuy:マーチレベルの学校って劣等感があるんですよ。上がいますからね。


園:さっき軽音サークルで何が流行っていたっていう話ですけど、よく私達のサークルはこれが好きですとか貼ってあるじゃないですか。ばーって。レディオヘッドがどうとか。あれって最近見なくないですか?
皆:あー見ないねぇ。
似非原:俺、ちょっと前それやったわ。自分で。あれ便利なんですよ。コミュニケーションツールとしては。深い話したければ実際会って話すればいいわけで。
キール:それはmixiのコミュニティ欄と同じじゃないですか。
terasuy:リアルmixiですか(笑)
inumash:大学の専門のSNSを作るっていうのが始まったじゃないですか。慶応かどっかで。
園:えー、そんなのあるの?
inumash:大学のインフラとしてSNSを作るっていう。アメリカではあって、慶応か早稲田か忘れたけど実際にもう動くって話は出てるんで。日大なんかはでかいけどそれを全部インフラ化しようって話もありまして。そのSNS掲示板?を代替するのかなぁと。
園:なるほどねぇ。
似非原:DMCに戻りませんね(笑)


つづく

カルコミュトークとは

姉妹イベント「ネオリベトーク

このブログはリアルで活動するネオリベトークの、カルチャー&コミュニティー分室にあたるネット公開用ブログです。
「ネオリベトーク」とは、新自由主義について若者が話し合う場を作る集まりで、政治や労働など実社会に関連した話題を中心として活動をしています。誰でも気軽に参加出来る場所として、月に1〜2回さまざまな街のカフェでトークイベントをしています。リンク先のネオリベトークのブログ版から詳細な説明が見られますので、興味のある方は是非ご参加下さい。

じゃあカルコミュトークは?

そしてそのネオリベトークから生まれたカルコミュトークは固い話だけでなく、漫画や小説、映画から音楽などの文化、はたまたネットや恋愛、スポーツなど、軽い話題をトークするイベントがあったら楽しいじゃないか!
という数人の発起人が始めたネオリベトークの姉妹イベントになります。
「様々な人が気軽に集まりトークが出来る場所作り」これを第一の理念に掲げ、ゆるく楽しめるイベントを目指しています。

実際に何をやっているのか

イベントは始動したばかりです。第1回は試験的にコミックの感想批評会を行いました。
10人ほどが都内のカフェで集まり2時間ほどのトーク。参加者の中にはネットには全く精通していないような人もいました。
具体的には毎回毎回、趣向を変えたイベントを開いていく予定です。
例えば次回は都内で行われているクリスマスイベントのフィールドワークを通したクリスマストーク。先々の案としても「映画鑑賞+トーク」や「原宿ツアーor秋葉原ツアー+トーク」などなど。
リアルを通さなければ出来ないフィールドワークを通じた集まりを目指しています。
軌道に乗るようになったら、感想批評会などは定期的に開くようにするのも1つの案です。これについても、感想批評なんてブログ上でトラバとコメントを打つだけで十分だ、という考えも出るかもしれません。しかしネットで出来るものを敢えてリアルでやる。その楽しみもこの集まりは秘めているのだと考えています。
今後の展望についてはこの先も模索していく次第です。

あなたもカルコミュトークに参加

僕たちは様々な参加者の方を募集しています。
このトークイベントに興味を抱いた方は「terasuy777@hotmail.com」までご連絡下さい。
毎回参加したくはないけどこのイベントには参加したい、という方も是非。
イベントは随時このブログ上で告知をしていく予定です。