「デトロイトメタルシティ」「ヨイコノミライ」でトーク vol.1

概要

11/18(土)
原宿の喫茶店「カフェアンセーニュダングル」にて17:30集合。未読者の為に主催側が持ち寄った、コミックの読書タイムを1時間設けた後トークをスタート。ICレコーダーで収録。

トーク作品

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

ヨイコノミライ完全版 1 (IKKI COMICS)

ヨイコノミライ完全版 1 (IKKI COMICS)

トーク参加者の紹介

Masaoキールterasuyinumash
Ryota似非原republic下向き
イズミ:学生。教員志望。音楽、特にメタルへの造詣が深い。

議事録

キール:私みたいにアニソンと同人音楽やサントラしか聴かないような人間には、ギャグ以外の何物でもないのですが、イズミさんのようなメタルに詳しい人にはどうなんですか?DMCは?
イズミ:ギャグですね。メタルって音そのものが世界観を表しているものなので
terasuy:これはじゃあメタルではない?
イズミ:いちおうデスメタルのジャンルには入る。
terasuy:じゃああんまりこういうのは最近はいない?
イズミ:古い
terasuy:希少種みたいな?
イズミ:メタルってジャンルからボーンと飛び出たような感じ。漫画とかの絵からだと音が分からないから。日本だと聖飢魔IIとかセックスマシンガンズとかああいうのをイメージしてもらえれば。



ここでMasaoが持ってきたDMCの元ネタ資料が配られる

Masao:渋谷系から結構引用しているところが多くて、全話の引用元が載っている
terasuy:つまりこれは音楽を可視化させるために、無理やりこういう格好にしているんですかね?デスメタルって。
Masao:えーと、聖飢魔IIってメタルなんですか?
イズミ:ロック。あ、でも、メタルに入るのかなぁ…。
terasuy:中途半端なところなんですか?
イズミ:メタル寄りかな
Masao:ルックス的にはメタルの人っていうのはああいう格好をすることが多いんですか?
イズミ:今は無い。聖飢魔IIって80年代からずっとあるじゃないですか。80年代のメタルはああいうのが多いけど、今は普通の格好をしている。
Masao:カジュアルになってきたみたいな所が?
イズミ:音楽の質もそう。よくプライドとかK-1とかの格闘技の冒頭部で流れているものとか。選手入場や選手を紹介する時の。あーいう時に流れるのがメタル。
皆:あー(納得)
キール:FFとか聖剣とかのボスシーンの音楽。
イズミ:そうそう、ロマサガとか。
下向き:なるほど、凄いイメージが湧きました。
Masao:アニメタルは聴いてましたよ。あれはどうなんでしょう?
イズミ:あれはー、ロックに近いんじゃないでしょうか?えっと、ドラムとかってわかります?
terasuy:どういうことですか?
イズミ:ドラムがどういう風に配置されているとか。足で打っているのがあって、両足でガガガガガガって。わかるかな、ロマサガ3のラスボスの音楽。どこどこどこどこやっているの、あれ足なんですよ。
キール:あれ足なんですか!?
イズミ:あれでメロディーを作っている。メタルはそういうドラミングが多い。
terasuy:じゃあこれは(DMC)はどうなんですか?
イズミ:足見えないけど、やってるんじゃないかな?歌詞とか見るとシャウトだし。

ここでMasaoが持ってきたファッキンガム宮殿のDMC音楽を流しはじめる。

Masao:ここに同人で作っている人の音楽があるんですけど、これってどうなんでしょう?
キール:ファッンガム宮殿の!
園:え、これがDMC音楽?
terasuy:これはもう完全なメタルなんですか?
イズミ:そう、ガタガタガタガタやってるだろ?


皆:(聴き入る)


Masao:結構テクニックを競い合うような肉体派の音楽なんですよね?メタルって?
イズミ:そうです、僕もドラムやっているんですけど、ツーバスをやるとここ(足を
押さえて)の筋肉がすごいことになるんですよ。


皆:(また聴き入る)


Masao:これ結構クオリティ高い(笑)
terasuy:じゃあかなり肉体的なもので男らしさを象徴しているのかな?逆に根岸は。
Masao:渋谷系なんですけど、フリッパーズギターとか聴いていると男のくせになよなよしやがってみたいな、小沢健二とか思い浮かべてみると分かると思うけど。男はやっぱり思いがちじゃないですか。そこのギャップを売りにしているんだよね。
terasuy:あれは渋谷系と呼ばれるものなんですよね?
Masao:あとからそう呼ばれるようになった。
terasuy:あー、確かに作中でも下北とか…
Masao:根岸くんはよくカヒミカリィが大好きって言ってるじゃないですか。コーネリアスっていう小山田圭吾の、あの人がカヒミカリィをプロデュースした。で、その人は小沢健二と共にフリッパーズギター渋谷系代表みたいな感じだったんです。
terasuy:確かにオザケンって言われるとイメージ湧くかもしれない。
Masao:そうそう、オザケンなんですよ。渋谷系は。
terasuy:が、こいつになっちゃった(DMC根岸をさして)
Masao:それが逆に肉体派のメタルをやる羽目に何故かなってる。
terasuy:やりたいことが出来ない若者みたいな(笑)


キール:この中のデスメタルってなんでファックだファックだと言ってるんですか?
イズミ:日本人が作る音楽の歌詞って綺麗なんですよ。文章になってて。外国ってこんなのばっかなんですよ。普通に直訳しても意味不明な、何言ってんのこいつ?みたいな。ノリっていうのかな。
園:断片的なんですかね歌詞が。


イズミ:スレイヤーってバンドとか聞いていると、鬱になりがちなもので、悪魔崇拝とかがよくあって。あの、生き血を浴びた奴、なんだっけかな。
キール:エリザーベートでしょ?
イズミ:そう、それがモデルの歌とかもあって。
皆:はー。


キール悪魔崇拝っていうか、アンチキリスト的なものって多いですよね。メタルとかビジュアル系にしても。ゴスロリのゴスにしてもそうですし。なんかあるんですかね?アンチキリストに繋がるものが。
イズミ:アンチキリストというか…うーん、反倫理?


Masao:資本主義の豚とかはどうなるんですかね?(笑)
キール:そこんところが繋がらないというか、マッチョイズムからそういうのが出てくるんじゃないかと思ったので。
terasuy:根岸との対比をさせたいが為にやっているのでは。こういう顔も最近はないっていうじゃないですか、で肉体的なメタル音楽、そうやって対比を強調させるというか。
下向き:描きやすくするために文化をデフォルメしている。
terasuy:やたらこれ、やりすぎっていう感じが(笑)


園:作者が描きたいのはどっちなんですかね?渋谷系デスメタルと。
下向き:あとは音楽そのものを描きたいのかどうかっていうのもあるんだろうし。
園:どっちの人間性を描きたいのか、作者がどっちに思い入れをしているのか。両方を両方とも好きな人はあんまりいないし。
Masao:葛藤を描きたいんでは?
似非原:そうそう、葛藤なんだよ。
下向き:でもこれ2巻以降見てみるとそうでもない。
terasuy:そうそう、ここで吹っ切れてますよね。1巻の終わりで。
似非原:いや、例えば病気の子の所に行ってあげる点とか。そこで葛藤が見え隠れしている。
Masao:根岸君がそういうキャラなんですよね。
terasuy:はっきりしない男みたいな。行ったり来たりで。
似非原:ある意味で現実味があるんですよ。はっきりしない奴の方が吹っ切れたらやばいよって。
terasuy:確かにジャックが言ってますよね。お前みたいなのが一番恐ろしいのかもしれないと。
皆:なるほどねー。


キールDMCっていう漫画は1巻か2巻くらいで多分終わってたと思うんですよ。ペース的には。ただ放蕩オペラハウスとかのレビューサイトで持ち上げられて一気に有名になって、タワーレコードにまで侵蝕するようになったっていう。
園:この漫画ってそんなに売れたの?
terasuy:アマゾンでめちゃくちゃ売れたとか。
キール:凄い売れたよ。2巻でタワレコだよ。
Masao:けんちゃんの最後にそのいきさつが書いてあったような。確かこれも最初は読みきりで終わる予定だったらしいんですよね。


下向き:皆さんDMCどこで知ったんですか?
キール:私はネットのレビューで。
Masao:俺はrepublicさんのレビューで(笑)
republic:私はアニマルは購読してますんで。
terasuy:ちなみにこれ、毎日新聞に載ったらしいですよ。
イズミ:渋谷の東急に展開されていたよ。売り子さんの女の子が「デトロイトメタルシティが発売です」みたいな。
皆:ふぇぇぇー。


下向き:例えばサイトとかアマゾンではどういう受け取られ方をされているんですか?
キール:ちょっと見た感じだと、デスメタルの人を馬鹿にしているんじゃないかみたいな。ギャグとして捉えていない人がちらほら。
Masao:それに対して、渋谷系の方が馬鹿にされているっていう渋谷系の人の意見が入ってる。
下向き:じゃあわりかし音楽漫画として見ているみたいな。
terasuy:そうですよね。馬鹿にされていると感じるのは、ネタとして見れていない所が。何かしら自分のそのなんていうんですかね。
Masao:あー、自意識を刺激するところはありますよ。根岸君みたいな勘違いオシャレみたいな人はちょっと辛いんじゃないですかね。
terasuy:あー、まさにこれヨイコノミライじゃないですか(笑)
Masao:えー、これそこで繋がるの(笑)


キールDMCの場合アメリとか具体的な下北沢とか地名とかを挙げているからじゃないですかね。ちょうど消費していた人が、アメリいいなぁって思ってたのだがDMCがあー、みたいな。
皆:それはわかるかも。
キールGTOと同じで、あれもスニーカーが流行った時にエアマックス云々とかプレステ2が云々とか。すごく身近なネタというか具体的な名詞を挙げてネタにしているんで、それと同じで。
園:じゃあ今もGTOって読み返すと恥かしかったりするのかな。
キール:あー、でもこういう時代あったねとか。
似非原:でもあれは悪い方向ではないじゃん。
Masao:GTOは名前は出てくるけどネタにはされていないから、自意識とかは傷付かないんじゃ。
terasuy:こんなギャグ漫画で自意識を刺激されるってのも可笑しな話はありますよね。
Masao:いやぁ、でも根岸君の歌詞とかで、チーズケーキ焼いてたさぁーん、とかそういう歌われ方しているから(笑)実際こういうのが大好きで路上で歌っているような人にとっては、俺こんなかよって思っちゃうんじゃないかな。
園:俺もリアルタイムで渋谷系を聴いたわけじゃないけど、フリッパーギターとか好きだったからフォロワーみたいな人がいて、そういうのがネタにされているのは初めて見たから。漫画とかで。だからそこで過剰な反応があったんじゃないかな。
terasuy:いい傾向と言えばいい傾向のような。
Masao:確かに馬鹿にされる対象ではなかったですからね。オシャレって持ち上げられる対象だったから。
似非原:いや馬鹿にされる対象ではあったんだけど、メジャーには出てこなかったっていう。
terasuy:サイレントマジョリティーじゃないですか(笑)
皆:(爆笑)
Masao;だってヤンキー文化とかで、小沢健二とかなにあの男女とか言われていたと思うんですよね。ただ雑誌とか作る人達は文化系の男達が多かったから、表には出てこなかったのかな。
似非原:でも矢沢イズムとか。渋谷系からすれば矢沢って、なにあの汗臭い男って思われていた。
園:矢沢永吉とかって単純じゃないですか。見なくてもわかるっていうものを渋谷系は馬鹿にしていたと思うんですよ。俺たちはそんな分かりやすいことをやりたくないって。でもこの漫画では渋谷系そのものが、分かりやすい存在として描かれてしまっている。
似非原:難しいのは、メタ的に言うと、分かりにくさを求めるっていうのが既に俺は分かりにくいから高尚なことをしているんだぞ、っていう自意識の表れに過ぎないんだよね。って簡略化できるんですよ。
Masao:そこを突かれているから痛いわけなんですよ。
園:オシャレなものがわかる俺、みたいな。
似非原:そうそうそうそう。
Masao:そういうことを言えるようになってきたのも、渋谷系が古くなってきてメタに見れるようになってきたんですよ。かっこ悪くなってきたよっていう。


下向き:そういう方向から消費している人って多いんですか?ようはコミックという文化系のメディアの中から渋谷系を馬鹿にしました、みたいな。ポップメイキングの話なんですけど。
Masao:レビューサイトを見ているとそういう人もいますけど、基本的にはギャグマンガとして消費している人が一番多いですよね。
下向き:1巻と2巻って反応の違いとかってあるんですかね。
Masao:そこまでは感じないかなぁ。


republic:でも、今、渋谷系とかださいでしょ?
皆:(爆笑)
似非原:まぁまぁ、その通りなんですけどー。
republic:いやあの、実際にサブカルのオシャレさとして渋谷系を持ってくることしか出来なかったのが、今のサブカルの文化なんじゃないかな。
似非原:クイックジャパンとか?


似非原:僕が思ったのは園さんがさっき、どっちの人格が愛されているかっていうので。さっき考えたらメタルの方が愛されていると感じるんですよね。馬鹿にされながらもシニカルじゃないんですよ。
園:誰に、作者に?(馬鹿にされているのが)
似非原:作者に。
terasuy:確かにシニカルではなくて、最後は吹っ切れてますし。
園:でもその根岸っていいものとして描かれていない。
似非原:表現方法として、俺にはメタルしかなくてメタルで戦っていくわけじゃないですか。それって結構表現とかを考えると重要なポイントじゃないかと思うんですよ。
republic:どっちが頭がおかしいかと言うと間違いなく根岸じゃないですか。
皆:まぁ確かに(笑)
似非原:頭おかしいとかの勝負ではなくて。俺の曲を馬鹿にするなって所もあって、わりかし受け容れている感がある。
Masao:2巻の最後の方ですよね。偽者が出たところ。
似非原:そうそう、わりかしメタルへの愛っていうのが。
terasuy:受け容れて徐々にペルソナの自分と同化していっているところがありますしね。
似非原:そう、凄い面白いのはある意味では、"これって僕のやりたかったものと違う"って風ではなくて、"これもやりたかったもの"という方が自意識が傷付かないってところがあって。あのDMCでお遊戯なら他の店でやってくれない、っていうのがあって、考えざるをえないよね。
皆:あれはひどい(笑)


Masao:だから好きなもので食えなくて否定されちゃったから、才能あるほうに行かざるを得なかったところがあるんじゃないですかね。好きより才能を選ぶしかなかった。
terasuy:僕はそこが作者が描きたかったんじゃないかなって思ったんですよ。自分のやりたいこと出来る人って一握りなわけだし。
Masao:俺がシューティングゲームやりたいんだけど、オシャレにならざるを得なかったみたいな(笑)
terasuy:それはちょっと(笑)
Masao:まぁでも描きたいのは音楽だと思いますよ。音楽をネタにギャグやりたいんでしょうね。初期作品集を見ると音楽好きだっていうのが伝わってくるし。校舎の落書きでジミヘンだかスミスだかの名前が書いてあったりして。
似非原:作者自身が渋谷系をやりたかったから、なんで俺漫画描いているんだろう、みたいな。
Masao:そうなのかぁ?(笑)
terasuy:作者はどんな音楽が好きなんですかね?
Masao:そこはまだ見えないですよね。
園:作者のサイトとかってあるんですか?
Masao:それはわからないなぁ。
terasuy:これどちらか好きだとしたらチャレンジャーですよね。苦悩しながら描いているのでは。
republic:渋谷系なんじゃないですかね?渋谷系の挙げるアイテムがあまりにもリアルすぎる。
Masao:確かに。今渋谷系をやっている人って恥ずかしながらやっているんじゃないですかね?90年代の初期だとナチュラルにカッコよかったんだけど、今は痛いけど好きだよみたいな。
園:どうして痛いんですかね?
terasuy:感覚的に痛い感じは分かりますけどね。
Masao:なよなよしてるからね。マッチョイズム的には認められないんじゃないかな。
下向き:音楽の内容が痛いんじゃなくて、渋谷系を消費する人々が痛いんじゃないですかね。消費者達の自意識の持ち方とか。
republic:今、現役の学生の皆さんに伺いたいくらいですよ。今、大学では何が流行っているのかとか。
似非原:友達がいないから…(笑)

ここでinumashが到着。自己紹介ののち、これまでの流れを説明し会話に参加。

republic:ようは軽音サークルにいる渋谷陽一を見ているから、何が凄いっていってるのかっていうのが非常に興味がある。軽音とか例えば、学祭とかでは誰のコピーバンドが流行っているとか。まさかスミスじゃねーだろと。
似非原:僕は大学の関係上、ノイズが凄い感じで。
Masao:明大はノイズの聖地?
似非原:いや、そうではないと思いますけど。凄い人がいて。明大生っていうか、大体偏差値60くらいの学校ってこじらせ系が多いんですよ。頭では勝てないから他でこじれちゃう。
Masao:60で勝てないってのもなぁ。
似非原:ようするに吹っ切れないんですよ。頭良くなっちゃったから。ここまで。
terasuy:マーチレベルの学校って劣等感があるんですよ。上がいますからね。


園:さっき軽音サークルで何が流行っていたっていう話ですけど、よく私達のサークルはこれが好きですとか貼ってあるじゃないですか。ばーって。レディオヘッドがどうとか。あれって最近見なくないですか?
皆:あー見ないねぇ。
似非原:俺、ちょっと前それやったわ。自分で。あれ便利なんですよ。コミュニケーションツールとしては。深い話したければ実際会って話すればいいわけで。
キール:それはmixiのコミュニティ欄と同じじゃないですか。
terasuy:リアルmixiですか(笑)
inumash:大学の専門のSNSを作るっていうのが始まったじゃないですか。慶応かどっかで。
園:えー、そんなのあるの?
inumash:大学のインフラとしてSNSを作るっていう。アメリカではあって、慶応か早稲田か忘れたけど実際にもう動くって話は出てるんで。日大なんかはでかいけどそれを全部インフラ化しようって話もありまして。そのSNS掲示板?を代替するのかなぁと。
園:なるほどねぇ。
似非原:DMCに戻りませんね(笑)


つづく